父の通っているショートステイ施設は、町の中心からかなり離れていて、民家がポツポツとあるだけの場所にあります。
山の麓というロケーションで、山を上がっていくとツツジが群生する春先には観光客で賑わう広い公園があります。
しかしツツジの季節を除けば、ほとんど車の往来はありません。
そんな施設の隣に、土日祝日のみ営業をしているお蕎麦屋さんがあります。
こんな場所にお店を開いているのかと最初は驚きました。
しかも土日祝日のみ開いていて、11時半から14時までの営業だといいます。
10割蕎麦と銘打っているのに興味を惹かれ、施設に行った帰りに立ち寄ってみました。
中に入るとテーブル席が3組と3人が座れるカウンター席しかありません。
メニューは十割そば単品か野菜天ぷらとのセットの2種類のみです。
値段をみると、普段食べているお蕎麦屋さんと比べても、かなり安い価格で提供されています。
せっかくなので、野菜天ぷらとのセットを注文してみました。
注文してからほどほど時間が経過した後、十割そばと野菜天ぷらがテーブルに運ばれてきました、これまで食べたことのある十割そばに比べると、色が白っぽく十割とは思えないような見た目です。
蕎麦を一本箸ですくい上げ、口にしてみると、そばの風味が口いっぱいに広がります。
十割蕎麦ならではの噛み応えがあります。
野菜天ぷらといえば、大葉、カボチャ、ジャガイモ、ピーマン、エリンギと盛りだくさんです。
お蕎麦屋さんの周辺は、畑が広がっていますから、おそらく自分の持ち物の畑で収穫してきた野菜たちなのでしょう。
厨房の中を覗くと、かなり高齢のおばあさんが一心不乱に蕎麦を打っています。
隣の席のご夫婦らしき二人が会計をしようとレジに向かい、会計の合間におばあさんに声をかけました。
どうやらお孫さん夫婦が接客をして、おばあさんと三人で切り盛りしているようです。
こちらも食べ終わってレジに向かいがてら、「美味しかったです」とお孫さんに声をかけがてら、二言三言やりとりをしましたが、店を出る時に外まで見送りがてらついてきてくれました。
別れがてら今月(11月)いっぱいで店を閉めるとのこと、驚いていると、冬になると前の道を行きかう車もめっきり少なくなり、客足が遠のくので、冬場の3か月間は店を閉め、来年3月から再開するとのこと。
理由を聞いて一安心しました。
また来春店が開いたら伺いますと返答し、店を後にします。
なんとも長閑で心豊かな時間を過ごさせていただきました。