団塊おんじ 人生100年時代を行く!

長く生きるかではなく、どう生きるかの試行錯誤録

“サードプレイス”が幸せにつながる

 長いコロナ禍のなかで、“非接触の生活様式”を強いられることにより、私たちは孤独感に陥ったり、人間関係が希薄になっていると感じて、閉塞感につながってしまうことがあります。

 

 そんな中、家庭や職場・学校以外の第3の居場所「サードプレイス」が、幸せにつながると注目されています。

 

 SNSで不特定多数と実際に会わずに交流できるようになった一方、サードプレイスは、居心地がよく、誰にでも開かれ、会話を楽しめる場なのです。

 

 昨年末の平日、東京都品川区の銭湯「東京浴場」次々と客がやってきます。

 

「大きいお風呂は気持ちいいわね」。同区の伊藤弥生さん(81)は、湯船につかりながら居合わせた人と話しを弾ませていました。

 

 伊藤さんは月2回ほど、東京浴場の休憩所で行われる高齢者向け体操教室に参加後、入浴しています。

 

「自宅にお風呂はあるけれど、おしゃべりできるのは楽しい」と言います。

 

 東京浴場は2020年7月に新装開店しました。

 

 休憩所には、大きな本棚に漫画や雑誌約7000冊が並びます。

 

 小さな本棚のレンタルスペースもあり、棚を借りた「棚主」が好きな本を並べた「古本屋」もあります。

 

 店長の相良政之さん(23)は「漫画を寄付してくれる人や親子連れなど若い世代も増えた。幅広い人が交流も楽しめる銭湯にしたい」と話します。

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   Dim Houさんによるpixabayからの画像

 

 “サードプレイス”は1980年代、米国の社会学者レイ・オルデンバーグが提唱したとされています。

 

 法政大教授の石山恒貴さんによると、常設でなく交流が緩やかでも、居心地の良さや中立性などがあれば“サードプレイス”に当てはまると言います。

 

 活発なのは目的交流型です。

 

 神奈川県茅ケ崎市の「コワーキングスペース チガラボ」は、地域をよくするためのアイデアを持った人が集まり実現化を目指し活動しています。

 

 また青森県弘前市の「コラーニングスペースHLS弘前」は、学生らと社会人が学び合う場として開かれ地域商店街の活性化に取り組んでいます。

 

 石山教授は「お金や地位による幸せが絶対でなくなり、自分の尺度で考える必要が生じた。サードプレイスは自分にとって何が楽しいか確認できる場になっている」とみています。

 

 京都市伏見区の僧侶、杉若恵亮(えりょう)さん(62)は月1回、「ボンズくらぶ」の語り合う会を30年以上続けています。

 

 寺と人々の結びつきが弱まっていると感じた20歳代、気軽に僧侶と話しができる場を作りたいと、自坊を飛び出し京都市内の喫茶店で開催したのが始まりでした。

 

 昨年12月25日の会でも、年齢や職業も様々な参加者の問いかけに、杉若さんが仏教の教えも交えながら軽妙に答えます。

 

 3回目の参加という兵庫県明石市の会社員男性(45)は「人の話を聴くと、こんな悩みもあるのかと気づきがある。対面ならではの温度感もいい」と話しています。

 

 杉若さんによると、仏教では他人に心が振り回される状態を自覚し、動じない心を得ることが幸せなのだといいます。

 

 そして「気軽に参加できて、いろんな人の考えを吸収できる『スポンジ的人生』を実践できる場を提供していきたい」と今後にむけての抱負を語っています。

 

 京都大学教授(社会心理学)の内田由紀子さんは、「人間は社会的動物なので、人とのつながりが幸福の核を占める。ただ、家庭や仕事の関係は固定化される点で、閉塞感につながることもある。日本のサードプレイスは協調性がありつつ、出入り自由の状態であることが大事。軽く、緩い付き合いを心がけるのがいい」

といいます。

 

 はやくオミクロン株の感染が落ち着いて、日本のあちこちでサードプレイスの場が広がっていけばいいと期待しています。