妻の妹から妻に「お母さんが施設のホームページに出ているよ」と連絡がありました。
早速パソコンでホームページを覗いてみると、1月の年始の催しを紹介するページに満面の笑みで出てきました。
それを見て、妻も娘も「元気そうだね」と喜んでいます。
コロナウィルス感染が始まって以来、2年間義母と面会ができていません。
今はオンライン面会で、月に一度画面を通じて顔を見ることができますが、毎回義母は「元気でやってるよ~」と大きな声で妻たちに応じています。
認知症は進行しているのですが、顔を見た娘たちに「元気だよ~」との一言に、心配をかけまいと精一杯の表現を託しているのでしょう。
そんな矢先に新聞で、「認知症3人組がFM生放送で大活躍」との記事が目に留まりました。
LUM3Nさんによるpixabayからの画像
以下、その記事内容をご紹介します。
「こんにちは~」。
声の主は、ラジオのパーソナリティーを務める女性トリオ「あめちゃんず」です。
天神ツキミさん(88)、酒井清子さん(88)、中村文子さん(91)の3人組で、全員が認知症グループホームで暮らしています。
この日は、月に1回の生放送の日。
「男前で愛情たっぷり。この近辺じゃほかにおらん」と、夫・忠義さんののろけ話を始めると、酒井さんがすかさず「見たことないけ、わからん」とツッコミを入れます。
中村さんが「愛媛県出身」と紹介されると、酒井さんが「ミカン送ってもらおう。厚かましいけどねえ」と返します。
天神さんは出身地の鹿児島の方言で厚かましい人のことを意味する「だっきょ面じゃあ」と笑います。
こんなやりとりが、北九州市のコミュニティーFMラジオから流れてきます。
認知症の当事者が出演するラジオ番組は、3人が入居するグループホームを運営する社会福祉法人「もやい聖友会」が2019年に始めました。
1時間の生放送は、シナリオなしのぶっつけ本番です。好きな歌を歌い、季節の話や昔話をします。
同じことを繰り返したり、やりとりが噛み合わないこともありますが、ラジオ番組の進行役を務める同法人の権藤理事長は「3人の会話は人の心をほっこりさせたり、笑顔にしたりする」と話しています。
ラジオのスタジオは、もやい聖友会が運営する特別養護老人ホームの1階にあり、地域住民がゲスト出演することもあります。
特養にはカフェや貸会議室もあり、学習塾などに使われています。
介護施設では入居者は職員や家族以外と接する機会が減りがちです。
権藤理事長は「施設を地域の人が足を運ぶ場にすれば、入居者も、地域住民の一人として暮らし続けることができる」といいます。
収録の様子は動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信しています。
3人組の一人中村さんの次女の安立善子さん(54)によると、約2年前にグループホームに入居し、一人暮らしをしていた頃よりも穏やかな表情が増えたといいます。
ラジオ出演する姿に、「母は子育てや家事に追われ、いつも自分のことは後回し。認知症になっても新しいことに挑戦し、楽しそうにしているのが、本当にうれしい」と話しています。
(以上、読売新聞1月10日(月)の記事より抜粋)
長生きすれば、誰もがなり得る“認知症”ですが、認知症になっても、その人らしく、安心して暮らせる地域づくりへの取り組みが大きな課題となっています。