団塊おんじ 人生100年時代を行く!

長く生きるかではなく、どう生きるかの試行錯誤録

医者も生身の人間なんですね

 1月11日のNHKスペシャルで放送された「認知症の第一人者が認知症に」葛藤と希望一年間の感動密着記録~人生百年時代のヒント~、を興味をもって見ました。

 というのもこの医者の認知症のタイプが義母と同じ「嗜銀顆粒性認知症(しぎんかりゅうせいにんちしょう)」であることと、認知症医療の第一人者、長谷川和夫さん(90)であるということでした。

 

 嗜銀顆粒性認知症は、比較的ゆっくりと進行する認知症だと聞いています。

 

「長谷川式」と呼ばれる早期発見の検査指標を開発し、またそれまで「痴呆」と呼ばれていた呼称を「認知症」に変えることを提唱するなど、人生を認知症医療に捧げてきた先生なのです。

 

 いま認知症診断に使われている、「今日は何日ですか?」「100から3を引くといくつですか?」「では、97から3を引くといくつになりますか?」など、どこでもポピュラーに使われている診断ツールはあまりにも有名です。

 

 長谷川さんは2017年に自ら認知症になったことを公表しました。

 

 番組はこの1年、長谷川さんとその家族の姿を記録し続けてきましたが、認知症専門医が認知症になったという現実をどう受け入れ、何に気付くのかを追っています。

 

 

 

 

 長谷川さんは、認知症になった後も講演活動を続け、自らの口で認知症になった自分の状態などを伝えています。

 

 私が印象に残ったエピソードがあります。

 

 ある日の講演でのこと、家族との打ち合わせでは講演の最後に歌を歌うことになっていましたが、長谷川さんは冒頭で突然歌いだしてしまうのです。

 

 壁際に控えていた家族は、慌てて参加者に歌詞カードを配ります。

 

 講演後に、家族は最初に歌いだしたことを咎めます、しかし長谷川さんには理由がありました。

 

 講演会場の雰囲気があまりにも固いので、アイスブレーク(固い雰囲気を和らげる)のつもりで、手順を変えて最初に歌うことにしたのです。

 

 順を間違えたのではなく、そこにはきちんとした理由がありました。

 

 認知症になったら、不確かな状態がずっと続くと思っていたが、正常な状態も確かに存在するということ。

 

 言葉が分からくなって話せないのではなく、「自分の言葉」に自信がなくなり、殻に閉じこもってしまうということ。

 

 そして確かさを取り戻すためには、他者との絆が重要であること…。

 

“君自身が認知症になって初めて君の研究は完成する”長谷川さんは、かつて先輩医師にこう言われたそうです。

 

 自分の戦場だという書斎にもどり、その後も戦い続けている長谷川さん、続く限りメッセージを発信し続けてほしいものだと思いました。