団塊おんじ 人生100年時代を行く!

長く生きるかではなく、どう生きるかの試行錯誤録

ドイツ人は年290万円でも生活が豊か?

【日本の労働生産性はG7の中で最下位】

  ジャパン・アズ・ナンバーワンなどともてはやされた日本経済、製造業が高いパフォーマンスで引っ張ってきた時代を経て、いつの頃からかあれよあれよと、生産性が落ちてきてしまいました。

 

 ざつくりいえば、経済のサービス化が主な要因かと思っています。

 

【なぜドイツは豊かな国なのか】

   そんな折、本屋で『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』というタイトルの新書が目にとまりました。興味を惹かれ、手にとって目次を眺め、読んでみることにしました。

 

 タイトルと一緒に、「消費税19%、貯金も意外としていない、なのに…」とあります。

 

 著者は熊谷徹さんという在独29年のジャーナリストの方です。

 

 ドイツといえば、EUの優等生です。

 

  そんなドイツ人の年収がわずか290万円とは一体どういうことなのでしょうか?

 

  また、その程度の年収でも「豊か」な生活が送れるというからくりは、一体何なのだろうか?と興味をそそられました。

 

  まず、「年290万円」についてですが、これは序章で説明されていて、「会社員、公務員、自営業者、学生、年金生活者を含めた1人あたりの年間可処分所得の平均」ということのようです。

 

  率直に言って、これに学生を含めるのはどうかと思ってしまうし、学生まで含めてしまえば、実際のドイツ人平均の実態とは異なるこれくらいの低い金額になってしまうのも当然かと思います。

 

  ちなみに、1人ではなく、1世帯当たりの平均可処分所得をネットで調べてみると、最新の円ドル相場換算で、ドイツ約405万円、日本約346万円でした。

 

 そうはいってもドイツにも当然年290万円で生活している人はいるわけですから、それでも「豊か」な生活が送れるという理由は何なのか?

 

そこが知りたくて読み進めます。

 

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【ドイツと日本のサービスの差】

 第1章では、凄まじいほどのドイツのサービスの悪さが列挙されています。

 

  日本でのサービスを当たり前と思っている私達日本人には、我慢ならないひどさなのですが、一方で、ドイツのサービスと比べてしまうと、ここでそれとは対照的に紹介されている日本の至れり尽くせりのサービスが、逆に過剰サービスとも思えてきます。

 

 第2章で筆者が言っているように、ドイツ人のように最初からサービスへの期待度を下げてしまえば、慣れてそれが当たり前になってしまうでしょう。

 

 たとえ至れり尽くせりのサービスがなくなってしまったとしても、それで生活に困るわけではないという考え方にも一理あります。

 

  また、日本のような過剰サービスを義務付ければ当然人手もかかるので、第3章で筆者も指摘しているように、特に日本のサービス業の生産性がドイツよりも大幅に低いのも、当然の結果だと思います。

 

  本書を通して読んでみて、筆者が繰り返し強調しているのは、ドイツ人の徹底した質素倹約振りです。

 

  無駄・不要と思うことには決してお金を使おうとしない合理主義、国民の間で共有されているワーク・ライフ・バランス意識の徹底です。

 

  消費も働く時間も抑えながら、2017年のGDPが日本に次ぐ世界第4位、国民1人あたりのGDPでは日本を14.9%も上回り、経済成長率においても1.7%の日本に対し2.5%です。

 

  高い生産性と技術力を駆使して、輸出で稼いでいるのです。

 

  筆者は、「社員全員が交代で2~3週間の休暇を取っても、会社は回る。1日の労働時間を10時間までに制限しても、経済は停滞しない」と断言しています。

 

  日本には日本の良さもありますし、本書で紹介されているドイツ人の価値観・生き方の全てを日本人が見習う必要はないとは思いますが(筆者もそのようには言っていません)、筆者が終章で、「全体として見るとドイツが「豊かな」国だと感じている」と総括しているのは、全くもってそのとおりだと思いました。

 

  収入が少なくても生活のゆとりを楽しめる社会を作るための第一歩は、過剰サービスをなくすことだとして、幾つかの実例を挙げて指摘しています。

 

 我々日本人の意識改革の重要性についても、もっともな指摘だと感じました。

 

「お・も・て・な・し」でオリンピック招致に成功した日本ですが、今後いろいろ見直さなければ点はありそうですね😊。