現在、世界の中で四面楚歌の状態になっている中国。
かつて鄧小平が「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」といって社会主義市場経済を強力に推し進めて以来、みるみる経済力をつけて、いまや米国を追い抜く勢いです。
人民の生活は豊かになり、億万長者を大量に排出するまでになりました。
しかしこの間に、中国の経済をけん引してきた第一線のビジネスエリートたちは、かつて日本で「企業戦士」といわれ、「24時間戦えますか!」といったCⅯのフレーズにあったように、苛烈な仕事ぶりを求められてきたのです。
そのような親を見ながら育った今の中国の若者達の中には、そんな生き方に疑問を持つ人達が出てきても不思議ではありません。
いま中国の若者の中に「寝そべり主義」を主張する人たちが出てきています。
無理に頑張らない生き方を指し、激しい競争や親からのプレッシャーに疲れた若者の心をつかんでいるといいます。
Dim Houさんによるpixabayからの画像
発端は今年4月、「タンピンは正義だ」と題したネットユーザーのSNSへの投稿でした。
タンピンは中国語で「寝そべる」の意味です。受験や就職の競争を避け、家や車を買わずに最低限の生活を送ることを指す言葉としてネットで広がりました。
文章にはこうつづられています。「常に周囲との比較や伝統的価値観から圧力を受ける。人間はそうあってはいけない」
投稿は反響を呼び、ネット上では、「経済発展の犠牲になる必要はない」
「社会の進歩とは、若者の苦労を少なくすることだ」などと共感する声が目立つといいます。
政府が人口抑制策として1979年に始めた「一人っ子政策」の下に生まれた
若者は、幼少期から親族の期待を一身に背負ってきました。
香港メディアなどは、常態化する長期間勤務や不動産価格の上昇といった生活負担コストの負担も寝そべり主義を生む要因だと指摘しています。
当然予想されるように、中国紙は批判を展開しています。
広東省共産党委員会機関紙・南方日報は「寝そべりは恥だ」「奮闘する人生こそ幸福な人生だ」とする論評を掲載し、これを国営新華社通信も掲載しました。
他にも「寝そべり族は経済社会の発展に不利だ」(光明日報)などの報道が出ています。
しかし若者の間では、結婚や出産に消極的な傾向も広がっており、習政権は労働人口の減少に危機感を募らせています。
内憂外患の中国・習近平政権、一党独裁で野望を実現しようと突っ走ってきましたが、足元をすくわれかねない新たな“悩みの種”になりかねません。