私の従妹の息子が宇都宮市役所に勤めており、LRT(次世代型路面電車)の開業にむけての準備プロジェクトに携わっていると、以前に従妹を通じて聞いていましたので、関心をもって見守っていました。
そのLRTが昨年8月に開業となり話題を集めました。
JR宇都宮駅から隣の芳賀町の工業団地まで、15キロ弱の区間を44分で結んでいます。
総事業費は約684億円で、国が半額を補助しました。
人口減少で電車の本数やバスの路線を減らす地方都市が目立つ中、なぜ宇都宮市は公共交通に多額の投資ができたのか。
その答えに驚きはなく、市がLRTの工事現場や車両の見学会、沿線の住民向け説明会を繰り返すという地道な取り組みで、市民の理解を広げただけだといいます。
2020年の市長選もLRTが争点となりましたが、推進派の現職が大勝しています。
世界のまちづくりの「成功例」として知られるフランス東部のストラスブールも1994年にLRTを導入しました。
やはり住民の支持を得ながら、20年以上かけて路線を大幅に拡充していったといいます。
日本では公共交通のサービスレベル向上のために公的な財源がほとんど投入されていないとの指摘があります。
人口減を理由に公共交通を縮小させれば、町は荒廃するばかりです。
宇都宮市はLRT開業を機に「住みやすい町」を全国にPRしています。
宇都宮駅周辺ではマンション開発が続き、郊外の新興住宅地に2021年に新設された小学校の児童数は、この3年で170人増え、860人に膨らみました。
地元の自治会長は「何もなかった地域がこんなに活気に満ちるとは」と驚いているといいます。
宇都宮市の人口が減少傾向にある中、3月時点の沿線人口は6万3890人と、LRT整備が本格化する前の2012年から約8%増えました。
このまま沿線での居住を選択する人が増えていけば、緩やかにコンパクトな街になっていく可能性があります。
今後も“住みやすいまちづくり”に力を入れている宇都宮市の取り組みを見守っていきたいものです。