高齢化が進み、担い手不足に悩み続けてきた農業ですが、未経験の若い人たちが参入するケースが増えているといいます。
農業に興味はあっても、いきなり自力で農業を始めるとなればハードルは高いのですが、そういう若者の受け皿になっているのが「農業法人」です。
農業法人は、2020年の調査では国内に3万社あまりあって、10年間でおよそ1万社増えています。
農林水産省によれば、新たに農業法人などに入って農業を始めた人は昨年1万1570人と過去最多を更新したといいます。
親の後を継いで農業を営む人は年々減っているのに対して、農業と無縁だった若い人たちが農業法人に次々と就職しているのです。
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以下、NHK農水省担当記者の保井美聡さんの取材記事から紹介させていただきます。
埼玉県加須市にある「中森農産」。社長の中森剛志さんは34歳、農業系の大学を卒業し、1から農業法人を設立しました。
耕作放棄地などを借り受け、今では東京ドームおよそ50個分の230ヘクタールの農地で作付けを行っています。
ここでは10人の社員が働いていて、平均年齢は29歳です。
多くが農業以外からの転職者で、毎年のように新たな従業員が入社していると言います。
中森さんの農場では、コメや大豆、家畜のエサ用のとうもろこしなどを栽培しています。
設立から6年たち、売り上げは1億円を超えるまでになりました。
中森さんが目指すのは、普通のサラリーマンにひけをとらない給与水準。
数年以内には、部長級の社員の年収を1000万円に引き上げたいと考えています。
そのポジションにいる農場長の佐藤康平さん(29)。
大学卒業後、都内でシステムエンジニアとして働いていましたが、3年前に転職。
その際、両親からは「苦労させるために大学に行かせたわけではない」と大反対されたそうです。
しかし、そうした農業のイメージも含めて、佐藤さんは変えていきたいと考えています。
「僕は農家や百姓ということばがあまり好きではないんです。百の仕事ができるというものの、その分、労働時間が長くなったりすると思うので、しっかりスペシャリストが集まるような会社組織を作って、持続性のある農業法人を目指していきたい」といいます。
このほか映像製作会社や電気工事会社、それに運送会社から転職してきたという人もいます。
「休みは不定期だけど自分の休みたい時に休めるし、前より給料が高くなった」「新型コロナなど感染症の影響を受けにくく、生きる基本である食べ物を作るという意味では安定した仕事だ」など、農業の仕事に満足している様子が伺えます。
「農業を始める」と聞くと、今までは実家の後を継いだり、退職後の趣味として行ったりするイメージでしたが、若者の就職先の選択肢になってきていると強く感じました。
ロシアによるウクライナ侵攻などで食料安全保障が叫ばれる中、持続可能な産業として農業の価値を見直す若者が増えていることも背景にあると思います。
若者の意識の変化に合わせて、国や農業界も適切な支援を行い、農業に従事する人を継続的に増やしていけるかが問われています。
この追い風をものにできれば、10年後20年後の農業は大きく変わっているかもしれません。
以上、保井美聡さんの取材記事から抜粋させていただきました。
若い人たちの農業への挑戦に期待しつつ、応援していきたいと思います。