コロナ感染が落ち着きをみせて、世界各地から訪日客が急増しています。
彼らのお目当ての一つは日本の食を楽しむことにあるのでしょう。
和食が2013年12月4日に無形文化遺産に登録されて以来、世界中から注目されるようになり、ヘルシー志向の強まりとも相俟って、和食を口にする機会が増えているのが統計数字をみても顕著です。
日本の食を楽しんでもらうのを可能にしているのは、世界中から集まる豊富な食材の存在です。
私たち国民も店頭に行けば大抵の欲しい食材は揃っていて、入手に苦労するといった事態は稀です。
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戦後工業化を急いだ日本は、米以外は海外から調達するという政策を取ったことに加えて、食生活の洋風化により減反政策が行われたこともあって、食料自給率は農水省による「カロリーベース自給率」でみると、1965年の73%から2022年の38%へ大幅に低下しています。
世界に目を転じれば、人類全体が健康に生活するために必要な年間穀物生産量は、現在でもすでに8億トンが不足しているといいます。
今後、気候変動の影響等で世界の穀物生産量は2039年をピークに減少に転じる一方で、世界人口は2059年に100億人に達する見込みです。
日本は、これまでは強い経済力を背景に、不足する食料を世界中から調達することができました。
しかし経済力の長期低下傾向や円安が続き、世界の食料争奪戦の中で、既に「買い負け」が起きているとも指摘されているのです。
戦争や災害などによるサプライチェーンの分断で、輸入による食料供給が突然途絶したり輸入価格が急上昇したりするリスクも高まっていくでしょう。
今のままでは国民の食の確保に苦労するということにもなりかねません。
世界的に食糧増産に向けた気候変動への対応、耕作放棄地の整備や食品ロスの改善、畜産物の代替品の活用などが必要になりますが、日本においては今後の情勢変化に備えて、低すぎる自給率向上へむけた政策や、不測の事態に備えた備蓄増強を急がなければならないでしょう。