生きるって自分にとって、どういうことなのか改めて考えさせられています。そのきっかけになったのが先日の樹木希林さんの逝去でした。最後まで役者として第一線で光り輝く演技を披露してくれました。
役者人生という面では、誰もが認める功績を残したわけですが、全身ガンに蝕まれる中で、それでも唯一無二の演技を披露し続けることができる原動力はどこから来ているのだろうと思います。
最近の映画2作品での対照的な演技は印象に残るものでした。一つは2018年5月19日公開の「モリのいる場所」です。
30年もの間、ほとんど家の外へ出る事なく庭の動植物を観察して描き続けたという伝説の洋画家・熊谷守一(モリ)夫婦の晩年の1日を、フィクションとして描いた作品です。
主演の山崎努が監督の沖田修一に、「こんなおもしろい人がいるよ」と伝えたことで映画化が実現したようです。
雑誌に山崎が熊谷守一についてコメントしたものを読んだことがありますが、山崎努は熊谷守一の生き方・考え方にとても心酔していたようです。
主演の山崎と軽妙でユーモラスなやりとりをする奥さん役の樹木希林は絶妙の演技を披露していました。
二人は同じ文学座に在籍していますが、50年以上の時を経てこの映画で初共演とのことで、完成後山崎努は樹木希林に感謝の言葉をかけたそうです。
もう一つの映画はカンヌ映画祭パルムドール受賞作品の「万引き家族」です。
家族を超えた絆を描く衝撃の感動作でした。ここではしたたかな婆さん役、入れ歯をとってのシリアスな演技で「モリのいる場所」とは対照的な好演技でした。
映画の中で、亡くなる前日に皆で海水浴に行った浜辺で、寂しそうに海を見つめているシーンが忘れられません。
最近はテレビや雑誌で頻繁にインタビューに応えていましたが、肩の力を抜いた自然体の様子は、今にして思えば、死が迫ろうとする中で視聴者や読者にお別れを言っていたのかも知れないと思ってしまいました。
亡くなる直前まで、周りに穏やかな笑みで接していたそうです。 合掌。