自分を含めて、日本の戦後世代は愛国心が希薄だといいます。
第二次世界大戦で敗戦国となった日本の為政者たちは、教育の方向性を見失い、義務教育における歴史教育にいたっては、近代史にほとんど時間をかけず、走り抜けるように教科書をなぞってお茶を濁してきました。
そうした教育の姿勢が影響してか、この国に誇りを持ち、国を愛するといった気持ちを、子供たちが育む土壌は作られないまま、今日に至ってきたような気がします。
Gennaro Leonardiさんによるpixabayからの画像
またグローバル化が進む中で、一つの国のことに止まらず、世界全体のことを見据えた視点のほうが重要だと思う若者が増えてきたように思います。
先日亡くなった音楽家の坂本龍一さんは、若い頃から「私は日本人であることを意識したことはあまりなく、世界のどこにいても、その地を愛しそこに住む人達と一体化することを心がけ、コスモポリタンであろうと心がけています」と言っていたそうです。
国を愛するとは、そもそもどういうことなのでしょうか。
そんなことを思いめぐらせているうちに、昔読んだ内田康夫さんの「はちまん」の一節を思い出しました。
第二次大戦時、上級軍人として戦い、いまは高知の神社の宮司に身を置き、日本の行く末に強い関心を持つ老人が、文部省のキャリアとして赴任してきた若者とのやりとりの中で、「国を愛するということの原点にあるもの」について、次のように話します。
おのれを存在させてくれるこの場所、そこから広がる大地、草原、森、山、川、海、空……そこに生きとし生けるものや同胞(はらから)たち。これらのすべてがわが祖国じゃと思うところから、国への愛情が湧いてくるがと違いますか。
太古、人間は自然の営みに不思議を思い、万物に神を感じた。大地にも樹木にも山にも海にも……感謝と尊厳と畏怖の思いがそこにはあった。それこそがじつは国を愛する初めの姿じゃったと、わしは思うちょります。
(以上 内田康夫著「はちまん 上巻」より)
自分が生まれ、自分を育ててくれた地のすべてに感謝をし、生きていくこと。
それが愛国心の原点にあるのかもしれません。
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