団塊おんじ 人生100年時代を行く!

長く生きるかではなく、どう生きるかの試行錯誤録

人間は見かけほど違わない

“多様性の尊重”という動きが、世界中の新しい潮流として注目されています。

 

しかし人類進化学者の海部陽介さんは、「たった1種の人類ホモ・サピエンスしかいない現在は、人類の多様性が失われた時代だ」といいます。

 

 10万年以上前までは、旧人であるネアンデルタール人、ジャワ原人、フローレス原人などいろんな人類が地球上にいたことがわかってきました。

 

 ただ、これらの人類は絶滅などし、アフリカにいた旧人から30万~10万年前に進化したホモ・サピエンス1種だけが生き延びて今日にいたります。

 

 北京原人などかつての人類の分布域は限られていましたが、“賢い人”の意味があるホモ・サピエンスはたったひとつの種ですが、5万年ほど前からアジア、オセアニア、ヨーロッパ、アメリカ大陸、そして太平洋の島々まで進出し、地球上の陸地のほぼすべてに住んでいます。

 

 ホモ・サピエンスは、脳が発達し、道具を多彩に操り、言葉を使い、好奇心と創造性、冒険心にあふれていたのです。

 

 そんな賢い人であるホモ・サピエンスですが、現実には肌の色の違いなどで偏見を持ち、差別問題や民族紛争が後を絶ちません。

 

 弓矢、銃、爆弾など技術の発達で、大量死も起き、今も起きているウクライナでの戦争には終結の見通しも立っていないのです。

                Dim Houさんによるpixabayからの画像

 

 これまでの人類学の研究によれば、世界各地の現生人類は、見かけの違いは大きいものの、DNAは驚くほど均一であることがわかってきました。

 

 確かに現生人類は、海を渡るなどして移動した世界の気候、風土に適合するよう、あるいは偶然の変異で、肌の色など一部の身体を多様に変化させてはいます。

 

 ただ、そうした差異は一部の形質に限られており、大した差ではではないのです。

 

 私たちは外見が違うと中身も違うと錯覚しますが、おいしさなど味覚や嗅覚、喜怒哀楽の感性はかなり共通です、だからこそ和食が世界中の人に受け入れられているのです。

 

 文化や価値観の多様性を知り、違いを尊重しあうことは大切なことではありますが、違いばかりを強調し、理解できない、分かり合えないとならないようにすることが必要です。

 

 チンパンジーに私たちの嗜好性を理解させようとしても、徒労に終わりますが、人間同士なら、言語が違ってもかなり分かり合えるのです。

 

「見かけの印象ほど人間は違わない」―「これが人類学の発見の大きな成果です」

 と人類進化学者の海部陽介さんはいいます。