長年の経験から、私は出された料理には絶対ケチをつけないようにしています。
妻が勇んで新しい料理に挑戦した時など、「どう?」と聞いてきますが、ここでダメ出しをしようものなら、「これはもう二度と作らない」などと落胆したり、怒りをあらわにしたりします。
「おいしいよ」と言っておけば間違いありません。
たとえおいしくなくても、彼女がすぐ後に食しますから、自分で「思ったほどおいしくないわね」などと自分で評価しますから、私が評価をくださなくてもよいわけです。
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若い頃には、仕事上や職場の食通などに連れて行ってもらった「一流の料理」に出会った経験から、知ったかぶりで「こんなふうに作るといいんじゃない?」などと言ってしまったものです。
すると必ず「そんなおいしい店に、連れて行ってもらったことがないから分かんない」と返ってきたものです。
最近では妻は、「毎日夕飯の献立を考えるのが面倒くさい」というのが口癖になってしまっています。
そして娘に「今晩何が食べたい?」と投げるのですが、「おいしいもの」とそっけない返事が返って来て、がっかりしています。
今ではお金さえ出せば、「一流レストラン監修の○○」などという商品・食材が手に入ります。
しかし、毎日のようにそんな贅沢をするわけにはいきません。
そして年齢がかさんできますと、塩分控えめ、カロリー控えめ、低脂肪高タンパクなどの条件がつきますから、よけい面倒なことになってしまっています。
ときには「久しぶりに○○が食べたい」などと頭に浮かんでくることがあります。
また食品スーパーやデパ地下などに、散歩がてらふらりと立ち寄った際に、食指をそそられる食材に出会うことがあります。
そんな時は、清水の舞台から飛び降りるつもりで、身銭を切って買うことにしています。
そして家に帰って、食卓に出される状態まで、責任を持って自ら料理をすれば、文句は言いません。
しかしそんな非日常の食事はともかくとして、通常の日のメニューを考えて、私たちに供してくれるのですから、本人を前にしては言えませんが、感謝しかありません。
決して“ダメ出し”などは出来ないのです。