バイデン次期米大統領は、多国間主義と同盟重視を打ち出しています。
トランプ大統領の「米国第一」主義から、円滑に転換できるかが問われます。
選挙結果に不満を抱くトランプ信者が、かなりの数存在している現状をみても、分断された国内をまとめ上げるには、説得力を持った「強いメッセージ」を出し続けなければならないでしょう。
国際的な合意や枠組みを蔑(ないがし)ろにしたトランプ政治の4年間で、米国の指導力と信頼は失墜しました。
また医療先進国であるはずの米国が、コロナ対策を主導するどころか、世界最多の感染者と死者を出しています。
トランプ大統領は、「チャイナウィルス」と呼び、中国を批判することで国民の不満の矛先を変え、「中国寄り」という理由で世界保健機関(WHO)を脱退しましたが、バイデン氏は大統領就任後、直ちにWHOに復帰すると宣言しています。
感染症対策で米国の存在感を示すことこそ、正しい方向であるはずです。
Gennaro LeonardiさんによるPixabayからの画像
また、バイデン新大統領は、温暖化対策重視の方向に舵を切るようです。
日本の菅政権も2050年までにCO2排出ゼロを掲げていますから、これで日米欧の足並みが揃うということになります。
ただやっかいなのは中国という異質な大国の存在です。
中国も、「2060年までにCO2排出ゼロを実現する」とは打ち出していますが、「一帯一路」という構想のもと、開発途上国に石炭火力発電技術を提供しようとしている動きをみても、本気で温暖化対策に力を入れようとしているとは見えません。
バイデン氏は、同盟国との連携強化で中国をけん制する方針を示しています。
米国の広範な同盟ネットワークは、中国にない強みです。
自由、民主主義の価値観を共有する国々が結束して、「力による現状変更」を図る中国やロシアに対処していかねばなりません。
また就任後、「パリ協定」に復帰するとも表明していますから、温暖化対策を含めた気候変動対策の国際的枠組みを強固なものにしていってほしいものです。
昨年9月23日にニューヨークで開かれた「温暖化対策サミット」でスピーチした一人の少女が、世界の注目を集めました。
スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(16)。気候変動が緊急事態にあると訴えるグレタさんは、毎週金曜日に学校を休んでストライキを続け、大人たちに本気の対策を要求。世界中の若者たちを動かし、賛同の波が広がりました。
背景にあるのは、温暖化がこれまで考えられた以上に、急速に進み、深刻な状態=“気候危機”にあるという事実です。
グレタさんをはじめとした、危機感を持つ方々の期待に応える方向に動いていくのか、注目してみていきたいと思います。