以前職場のペーパーレス化を進めようという掛け声のもと、なんでもかんでもコンピュータの中に仕舞い込み、紙で保管するのをやめようとすることがブームになった時代がありました。当時の私の机の上は、紙の書類の山でした。
そんな惨状でしたから、ペーパーレス化の大号令がかかるのも無理からぬ状態でした。
当時は、私もパソコンをまだ使い慣れない頃でしたから、重要な書類や自分でまだ理解・把握しきれていない案件の書類などは、パソコンの画面越しに読むことに抵抗をかんじていました。
ですから、ペーパーレスとはいっても、気になる書類は紙にプリントして、手元に置かないと落ち着かないという有様で、机の上の書類の山がなかなか低くならなかったのを思い出します。
また、読書をするのも、昨今は電子版をタブレット端末などで読む人も多いようですが、私は紙の本をくりながらの読書でないと落ち着きません。
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文部科学省は12月22日、デジタル教科書の使用時間を「各教科の授業コマ数の2分の1未満」と定めた基準を撤廃する方針を有識者会議で示し、了承された。との報道がありました。
さまざまなものがデジタル化されていく中、初等教育までどんどんデジタル化されていくと、この時期に身につけなければならない基礎的な能力の一部が身に付かないままで、育っていってしまう恐れがあります。
小学生はまず、思考力や判断力の基礎となる学力に加え、ノートの取り方、予習復習の仕方、資料の探し方などを学ぶ方法を身に付けることが必要です。
また読解力は、AIには代替できない人間の能力です。デジタル教科書には、紙の教科書にはなかった便利な機能が付いてくるでしょうから、それにより読解力の育成が阻まれる恐れがあります。
国立情報学研究所の新井紀子教授は次のように述べています。
今、中学生の半数以上が、教科書を読んでも理解できない状態で卒業している。
21世紀に必要な能力は教科書を正確に読み、正しいイメージをつかむ力だ。
学校教育で求められるのは、教科書を精読してゆっくり考え、自らノートにまとめ、わからなかった時に自分で調べ、どこでつまずいているのかを説明できる力を育成することだ。
読解力や思考力、問題解決能力は訓練しないと養えない。
デジタル教科書によって学習スキルが低下し、学力格差がますます広がる懸念がある。
(以上)
各分野でデジタル化の遅れが指摘されている昨今ですが、初等教育分野まで拙速にデジタル化をすすめていくのは、私だけでなく多くの人が疑問符をつけているのではないでしょうか。