先日、毎年恒例の「流行語大賞」が発表され、今年は「3密」が大賞に選ばれました。
しかし「東北の流行語大賞」というものがあるのを初めて知りました。
興味を持ってみてみると、今年の流行語大賞は、「岩手ゼロ」だそうです。
新型コロナウイルスが世界的に流行した今年。1月に日本で初めての感染者が確認されて以来、各都道府県で次々と感染者が確認される中で、岩手県は7月29日に初の感染者が確認されるまで全国で唯一半年間の「感染者ゼロ」状態を維持しました。
SNS上では「岩手結界説」がささやかれるほど驚異的な記録が話題となりました。
結界(けっかい)とは、邪悪なものの侵入を阻んだり、魑魅魍魎(ちみもうりょう)を封印したりするバリアーのようなものです。
結界説とは、「六芒星(ろくぼうせい)で結界をつくり新型コロナ感染症から守られた」というものです。
東北のメジャーな地方紙・河北新報も「六芒星(ろくぼうせい)」コロナから岩手守る? 一関で広がるうわさ」という見出しで、ニュースに取り上げました。
NickypeさんによるPixabayからの画像
以下は、その時の記事の内容です。
新型コロナウイルスの感染者が、全国で唯一確認されていない岩手県。その理由を巡り、南の玄関口の一関地方でまことしやかなうわさが広がる。
「世界遺産・中尊寺周辺にある『六芒星(ろくぼうせい)』の結界=?=がいにしえより地域を守っている」。陰陽師(おんみょうじ)安倍晴明が活躍した平安時代にさかのぼるという六芒星の謎を探った。
(一関支局・金野正之)
発端は感染が急拡大した4月中旬に発表されたブログ「岩手に感染者が出ていないのはなぜ」だった。
観光振興の民間団体「世界遺産平泉・一関DMO」代表の松本数馬さん(39)が、晴明が京都に張った結界を例に「岩手にも六芒星があり今も受け継がれているらしい」と書いた。
「過去の歴史でも大きな疫病とはほぼ無縁の地域。六芒星は面白い説だ」。郷土史の著作がある平泉町観光商工課の八重樫忠郎課長も全く否定しない。
六芒星は地域信仰を20年来研究してきた一関市の学習塾経営金田渉治さん(59)が数年前に発見したらしい。
早速訪ね、歴史ロマンに満ちた説を聞いた。
六芒星の中心は、東北最古といわれる配志和(はいしわ)神社。
110年、ヤマトタケルノミコトが蝦夷征伐の際に悪徒退散を祈願したのが始まりとされ、かつて磐座(いわくら)山と呼ばれた現在の蘭梅(らんばい)山に立つ。
北側の頂点から左回りに白山神社、達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわやびしゃもんどう)、三嶋神社、鹿島神社、滝神社、〓草(もくさ)神社を結ぶ。
全てが磐座をまつり、自然神「アラハバキ」を信仰する場所だ。
北東の鬼門を封じるように全体が左向きに15度傾く。東西と南北に約13キロ幅で広がる。
金田さんは六芒星の始まりを「11世紀後半ごろ」と推論する。
地元豪族・安倍氏が源氏の朝廷軍に滅ぼされる前九年の役の時期だ。
今の中尊寺のすぐ北側に安倍氏の拠点で激戦地だった衣川柵(奥州市衣川)があった。六芒星内部は北上川が流れ、街道の要所で重要な拠点だったようだ。
戦乱期に安倍氏が六芒星で守りを固め、源氏が結界を崩そうと仕掛けたように推察できるという。源氏に関連する複数の神社が確かに六芒星周辺に現存する。
10世紀に生きた安倍晴明と安倍氏はそもそも親族。茨城、福島県には晴明生誕などの伝承も残る。
金田さんは「晴明の一族が六芒星の結界を張った可能性もなくはない」とも考える。
状況から説得力はあるものの呪術のため、史料はほぼ残っていない。
史跡への「昇格」はないだろうが、歴史に思いをはせる観光資源として生かす道はある。
仙台市で「星の街仙台プロジェクト」として六芒星の魅力を発信している八代峰さんは「(パワースポットが直線的につながる)西洋の風水『レイライン』と見て取れる」と解説する。
ブログを書いた松本さんは「奥州藤原氏が平和を願ったのは、阿弖流為(あてるい)や安倍氏の時代に戦乱があったからだ。時代に消えた敗者の未知なる歴史にこそ魅力があり、目を向けたい」と新たな展開を模索する。
(以上 河北新報の記事内容を抜粋しました。)
いまやコロナウィルス感染拡大は、全国に広がり、東北地方もその例外ではありません。
東北流行語大賞の「岩手ゼロ」をめぐり、結界説というロマンに満ちた話があるというのは、何か救われる思いがしました。
ちなみに流行語大賞の次点に食い込んだのは「謎の飛行物体」でした。
多くの人が目撃したようですが、確認はできていないようです。
1位といい2位といい、謎めいていて面白い流行語でした。
東北版流行語を発信しているのは、TOHOKU360という参加型のニュースサイトです。
経験豊富なメディア出身の編集者と、東北6県の各地に住む住民の「通信員」とが力を合わせて、まだ知られていない価値あるニュースを一人ひとりが自分の足元から発掘して、全国、世界へと発信しています。
今後も東北の生き生きとした情報を、発信し続けてほしいものです。