【なぜか2ヶ月遅れた財政検証の発表】
先日、年金だけでは2000万円足りないという「老後2000万円問題」が話題になりましたが、その後「将来の公的年金の財政見通し」(通称、財政検証)が8月27日に厚生労働省から発表されました。
通常なら6月に発表されるはずのものなのですが、今年は2ヶ月遅れの発表に。
「参院選前に発表すると、与党の選挙結果に不都合な影響を及ぼすことでも書いてあるとまずい…」といった「忖度(そんたく)疑惑」も飛び交うなか、ようやく発表され内容が明らかになりました。
【年金は今後、2割減?】
現在、年金生活者は「所得代替率」(現役世代の収入に対する割合)が6割程度の年金を貰っていて、やがては5割くらいになると「財政検証」には書かれていますが、実際にはどうなるのか、そのあたりが気になるところです。
「所得代替率」というのは、現役男子の平均手取り賃金に対して、モデル世帯が受け取る年金が何割くらいか、という数字です。現在の所得代替率は6割で、今後は5割まで減らして、あとはなんとか維持しようといっています。6が5になるわけですから、約2割減です。
【モデル世帯ではない世帯の現実】
ただモデル世帯というのは、40万円くらいの賃金で40年働いた夫に、40年専業主婦で支えた妻、いずれも未加入期間なしというケースです。
現実にはそんな人、どのくらいいらっしゃるのでしょうか?
大多数の人はモデル世帯の加入条件に満たないわけですから、モデル世帯の所得代替率が5割という水準なら、実際にもらえるのは現役世代の4割とか、下手すると3割水準という話になるはずです。
自営業夫婦だと老齢基礎年金しかもらえませんから、さらに悲惨なことになります。
モデル世帯に近い夫婦だとしても楽観はできません。いま22万円もらっているのが、2割ぐらい減らされるわけですから、現在価値に置き換えると20年後には17万円台になってしまうのです。
そもそも2000万円という数字は、総務省の家計調査をもとに、高齢夫婦の生活費が月26万ぐらいかかるとして、モデル世帯の年金が月額22万だから4万足りないという計算をもとに出たものです。
これが今後、年金が17万ぐらいに減るので、プラス5万、合わせて月9万円足りないということになります。
月9万不足なら1年で108万、夫が亡くなるまでの20年間で2200万円ぐらい不足します。
その先の妻のひとり暮らしを考えると、2500万~3000万円も足りないわけです。
モデル世帯でさえこの金額ですから、ましてや非正規雇用の多い氷河期世代が老後を迎えるころには、国民年金のみという人も多いはずです。
こうした人達は3000万~4000万円足りなくなるのではと危惧されます。
【将来の年金額の試算】
では将来65歳になった時に、年金は月にいくらもらえるのか?
財政検証の内容をもとに「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾さんが試算したところによると、
【夫・会社員/妻・専業主婦の場合】
・10年後……夫13.8万円、妻5.9万円
・20年後……夫11.6万円、妻5.1万円
・30年後……夫10.6万円、妻4.6万円
【夫、妻ともに自営業の場合】
・10年後……夫、妻それぞれ5.9万円
・20年後……夫、妻それぞれ5.1万円
・30年後……夫、妻それぞれ4.6万円
【単身の中年フリーターの場合】
・10年後……なし
・20年後……厚生年金加入者6.7万円、国民年金のみだと4.7万円
・30年後……厚生年金加入者6.1万円、国民年金のみだと4.3万円
※試算の条件:年金財政検証のケース3の所得代替率に基づく。経済成長率0.4%。中年フリーターは単身者、月収14・5万円、23歳就職・60歳定年、国民年金のみの場合は23歳~60歳まで保険料納付。
なんとも暗澹たる予測に、愕然としてしまいます😢。
いったいどんな未来が待ち受けているのでしょう…。
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