【しみいる鳴き声】
旧盆の少し前でしたが、実家を訪れました。
山峡の地といえども、今年の暑さは格別のようで両親ともに夏バテ気味の様子ですが、さすがに夕方になると涼しい風が流れ込みほっとします。
盛夏の季節に実家を訪れた時の楽しみの一つが、ヒグラシ(蝉)の鳴き声を聞くことです。
普段、我が家の周辺で鳴くミンミンゼミやアブラゼミとは違い、夕方近くの涼しくなる時間帯に泣き始める印象があります。
セミというと、うだるような暑さの中でうるさく鳴くので、煩わしいイメージを持つ方も多いのではないかと思います。
ヒグラシは「カナカナカナ」と森や林にしみいるような鳴き声で、その声を聴いていると、一日が終わり、これから夜が迫ってくる夕方の時間帯に、どこか「物悲しさ」を感じさせ、落ち着いたしんみりとした気分になります。
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【はかなさの象徴】
セミの寿命は一週間とよくいわれます。
ただまだはっきりしないことが多く、専門家の間ではそれ以上生きるセミも多くいるとの説が有力だそうです。
いずれにしてもそう長く生きられるわけではありませんから、セミは「はかなさ」の象徴として昔から文学に登場しています。
「はかない」とは「不確か」「むなしい」などの意味で、よく用いられるのは、セミや抜け殻を意味する「空●」という表現です。
例えば平安時代に書かれた「源氏物語」には、まさに「空●」という巻があります。
ある女性を好きになって家をこっそり訪ねた主人公の光源氏が、感づかれた女性に逃げられてしまいます。
その時、部屋に残された薄い着物をセミの抜け殻になぞらえ、かなわない恋心を和歌に託しました。
さて夏の暑さもピークを過ぎようとしています。この時期になると、夕方に我が家の近くの神社の森にも「ヒグラシ」が登場します。
その時には私もヒグラシの鳴き声を聞きながら、「人の世のはかなさ」などを考えながら、もの思いにふけってみたいと思います😊。