【選挙結果は国民のバランス感覚?】
今回の参院選の結果が出ました。
自民・公明両党で71議席を獲得し、改選議席の62を上回りましたが、憲法改正に前向きな日本維新の会と合わせても、改憲発議に必要な3分の2(164)は割り込みました。
選挙結果をみて、これまでも何度か思ったことがあるのは、日本国民のバランス感覚です。
下馬評どおり自公であっさり過半数を超えさせたものの、改憲勢力が3分の2を超えることは許さない、というバランス感覚が働いたと感じています。
日本人は、こういったバランス感覚を、いつの頃からか身につけてきたのです。
【日本に根付いた中庸の精神】
「中庸(ちゅうよう)」という言葉があります。
これはかたよることのない「中」をもって道をなすという意味で、孔子が最高の「徳」として説いた概念です。
日本人が身につけたバランス感覚は、この中庸の思想につながっているような気がします。
あの渋沢栄一も、極端な考え方に身をおくことを戒め、中庸がよいといっています。
「過ぎたる」「及ばざる」いずれもよくない…「ほどほど」が一番と述べています。
【中庸から事なかれへ】
しかし本来の「中庸」から、「事なかれ主義」そして今がよけりゃいいんじゃないのといった風潮がいつの頃からか、はびこってきたような気がします。
戦後の復興を経て、高度成長期の世界を驚かせたパフォーマンスは、日本人の勤勉さがもたらしたものです。
しかしバブル崩壊後は、勢いはすっかり無くなり、中国経済の膨張のおこぼれを預かって、なんとか経済の体裁を保ってきたのです。
世界に誇れるいくつかの産業は育ったものの、重厚長大産業に縋って成長の絵姿を書き続けている間に、情報通信の分野での大きな変化に乗り遅れてしまい、GAFAが世界を席巻するのを、手をこまねいて見ているしかできませんでした。
過去の成功の延長線上でしか物事が考えられない間にです。
しかし日本企業が頑張っていなかったわけではなく、見当違いの方向に勤勉さを発揮して、じりじりと生産性を低下させてきたのではないでしょうか。
日本国民のバランス感覚は、よい方向に発揮されるところもありますが、将来の脅威やチャンスを見逃しかねない両刃の剣でもあると思っています。