【当時、薬としての効果を期待されたコーヒー】
コーヒーが江戸時代に薬として利用されていました。
江戸幕府が北方警備を命じた津軽藩士たちに、水腫病の予防策として和蘭コーヒー豆を配給したという記述が残されています。
日本にコーヒー豆が入ったのは、1641(寛永18)年以降、長崎の出島にオランダ人が自分用として持ち込んだのが最初といわれています。
出島に出入りしていた一部の日本人が飲用できたようで、当時は薬としての効果を期待され、水腫に効果があるとされていました。
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【寒さ厳しい稚内・宗谷】
稚内を訪れました。ここは私の父が第二次世界大戦の終戦間際に通信兵士として滞在していた場所です。
以前よく稚内の冬の厳しい環境の話を聞かされていましたが、実際来てみると想像以上の風雪に驚くばかりです。
【北方警備の藩士たちの悲劇】
1806(文化3)年~1807(文化7)年にかけて、ロシア通商使節のニコライ・レザノフの部下・フヴォストフは独断で水兵を率い、ロシア皇帝の許しもなく樺太や北海道の漁村で略奪を行ったり、番屋が襲われて放火されたりという事件が頻発していました。
そのため江戸幕府は襲撃に備えるよう、1807(文化4)年、宗谷郡域は天領とされ、江戸幕府は仙台・会津・南部・秋田・庄内の各藩に蝦夷地警備と出兵を命じました。
1809(文化6)年以降は、津軽藩がソウヤに出張陣屋を築き警備に当たりましたが、宗谷の気象条件が厳しく、冬期間の寒気により相当数の死者を出しており、宗谷の越年を増毛に変更し勤番陣屋を築造しています。
この北方警備は、ただ単に寒さに強いはずという理由で、本州最北端の津軽藩士が宗谷に派遣されましたが、厳冬のため多数の死者を出しました。
寒さと野菜不足により、一冬で50名が水腫病などで死亡したと記録されています。
【水腫病に対し薬効があるコーヒー】
1803(享和3)年、京都の蘭方医「広川解」(けものへんに解、読み:かい)が、コーヒーは水腫病に対しての薬効がある(コーヒー豆に含まれる水溶性ビタミンB複合体の一つニコチン酸)ことを発見しています。
コーヒーに含まれるカフェインの利尿作用に効果があると考えられました。
水腫病の予防薬として和蘭コーヒー豆が兵士たちに配給されたという記述が残されています。
その記述には『和蘭コーヒー豆、寒気をふせぎ湿邪を払う。黒くなるまでよく煎り、細かくたらりとなるまでつき砕き二さじ程を麻の袋に入れ、熱い湯で番茶のような色にふり出し、土瓶に入れて置き冷めたようならよく温め、砂糖を入れて用いるべし』とあります。
その後の記述に、水腫病による死者の報告はないようですから、コーヒーが一定の薬効効果をもたらしたものと考えられます。
稚内市宗谷村宗谷の宗谷公園内に、津軽藩兵詰合の記念碑があり、コーヒーを薬として飲んでいた記述があります。
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